このインタビューは、6Cメンバーからの質問に松本陽一が答えるという形で進みます。
メンバーすら知らなかった彼の歴史、行動、思考、策略が全てが分かったとき、
『コンクリートダイブ』の全貌が見えてくるはずです。
これを全部見れば、『コンクリートダイブ』の作り方がばっちり分かります!!
これで、よいこのみんなも『コンクリートダイブ』が作れる・・・かも。

―今回は「本番直前インタビュー」です!!
『コンクリートダイブ』の「現場責任者」である松本陽一さんに、「着工」を目前に控えた今のお気持ちなどについて色々お聞きしていきたいと思いますよろしくお願いします。
松本 よろしくお願いします。

−『コンクリートダイブ』を書き上げた感想はどのような感じですか?(小沢和之からの質問)

松本 書き上がった時は、やっぱり「書き終わった!」という脚本担当としての達成感はありますね。でも、この時期になってきますと「出来あがりの芝居がどうか」っていうことが気になってしまいますんで、そういった感覚はあまり無いですね。やっぱり舞台の上で幕が上がるまでわからないものなので、「感傷に浸ってる場合ではない」といった感じですね。ゴールは千秋楽の幕が降りるまでですから。
そのゴールが来るまでは、脚本というのは「足」になったり「台」になったりして、そこから何かを作るものですからね。まあ、「それ自体は価値が無い」と言うとおかしいですが、「書き上げた先にそこから何が来るのか」、「土台の上に何を組むか」っていう感じですね。

−公演直前での「役者さんへのアドバイス」等は何かありますか?(松本雄介からの質問)
松本 「風邪引かないでください」ってことですね(笑)これは面白く言ってるんでもなんでも無く、大真面目に一番大事なことだと思います。ハードに稽古して、終わった後稽古場を出ると外は木枯らしが吹いてるわけですよ。で、一人風邪引くと「集団感染」するっていう(笑)
5、6人風邪引いちゃって学級閉鎖みたいになってしまったってことが一度ありましたからね(笑)本番に風邪引かれると困るんで、みなさん予防注射を打ちましょう(笑)

−前回公演(『ミキシング・レディオ』)を上回る出来となっている自信はありますか?(小沢和之からの質問)
松本 
誰からの質問ですか?これ(笑)う〜ん。今ここで「前回を上回ってません」なんて言ったら大問題ですよ。お客さんも「じゃあ観に行かないよ」ってことになり兼ねないですからね(笑)
僕らはいつだって、「前回よりも良い公演にしよう」と思ってます。でも、正直「上回ったかどうか」っていうのは、僕が判断するんでも、役者さん達が判断するんでもなくて、もちろん観に来てくださったお客さんが判断することですからね。それに、前回とは作品の質も違いますから。そういった意味でも、比較するのは難しいですね。例えば、好みの問題もありますしね。「軽快なタッチのコメディーが好き」って人もいれば、「重厚な人間ドラマが好き」って人もいますしね。まあ、前回が「軽快なコメディー」だったからって、今回が「重厚な人間ドラマ」になってるかというとそういうわけでもないんですけどね(笑)
今回は前回とタッチが違うので、「今回のほうがいいな」っていう人もいれば、「前回のほうがいい」って人もいると思います。でも、もちろん「両方いい」って言っていただけるように頑張ってます。だから、この質問はどちらかというと愚問ですね(笑)●沢和之め!(笑)


−前回公演を「100%の意気込み」だとすると今回は何%だと思いますか?(栗原和滉からの質問)

松本 
誰だよ、こんな質問したの?あー、新人の。新人のヤツね(笑)こんな質問で「80%の意気込みです!がんばります!!」なんて言ったら、お客さんも「おいおい、そんなの行かないよ」なんてことになり兼ねないですよ。そんな発言、大問題です(笑)もちろん「100」%ですよ。
なんだかみんな今までの作品(2001年9月上演『ホテルニューパンプシャー206』・2002年7月上演『ミキシング・レディオ』)と比べたがりますね。僕から言わせてもらえば、いつもやってることは変わりませんよ。なんて言うか、いつでもバタバタしてますし、いつも「100%」って感じです。役者さんとかによく、「稽古場で出来ないことは本番でも出来んよ。奇跡はほとんど起きんよ」って話はしてるんですけど。「稽古場で100%で、本番では120%」と言わずに、「105%」ぐらいの出来になってくれればいいんじゃないかと思います。この5%ていうのは非常にでかいんじゃないかって思っています。
というわけでこの質問の答えは、「前回を100%とすると今回は105%です」。

−『コンクリートダイブ』を観る際に、何か「お客様にお願いしたいこと」はありますか?(嘉山理絵からの質問)

松本 
携帯電話の電源はお切り下さい(爆笑)僕も結構忘れたりするんですけど、みなさんマナーモードにして安心してしまうんですよね。徹底してる劇団とかだと、「マナーモードもダメ」って言うじゃないですか。それはなぜかと言いますと、マナーモードにしたって電池が切れたら「ピーッ」って音がするんですよ。その時だけはマナーは効かないんですよね。そういう意味で、前説で「音が出るので"必ず"電源を、電源を御切り下さい!」って、言うみたいですね。まあそこまでは言いませんけど、「電源を御切り下さい。」(笑)

−この『コンクリートダイブ』で伝えたいメッセージは何ですか?(附田泉からの質問)

松本 
僕の作品には「メッセージ性」はいつもないんですよ。少なくともここ2作(『パンプ』・『ミキシン』)と、今作品には無いですね。観た人が何を想うかは自由ですが、「これを汲み取ってください」っていうものはないですね。
「この作品を観たお客さんの心の中で何か始まる」、そんな台本ですね。

−今回の『コンクリートダイブ』で、「最も力を入れたシーン」や「見逃さないで欲しいこと」は何かありますか?(浅田啓治からの質問)
松本 
う〜ん、やっぱり「作品の後半」ですかね。キャッチコピーにもありますように、この作品のテーマでもある「街を疾走る(はしる)」っていうものがあるんですよ。「疾走する感じ」っていうのが作品の後半に現れてるので、そこで「ちょっとトイレ行ってたり」っていうのはちょっと…。
−「後半を見逃さないために、始まる前にトイレに必ず行っておいてください。」ってことですか?(インタビュアー)

松本 
そうそう…ってそこを念押しすんじゃねえよっ!(爆笑)お客さんに念押しすんのはそっちじゃないです(笑)伝えたいのはそういうことじゃないですよ…。

−どんな心境で公演を迎えたいですか?(春日雄大からの質問)

松本 
ゆっくり寝て初日を迎えたいですね。まだなんだかんだ仕事が残ってますからね。前回みたいに前日に徹夜して、フラフラになりながらトラック運転して劇場に行って、みんながセット組んでる間に楽屋で仮眠っていうのはやめたいです。本番前っていうのはとにかくバタバタするんですよ。どんなにスケジュールに余裕を持ってやってても、なんだかんだとやることがありますからね。劇場入ったら入ったで、初日の幕が上がるまでは戦場ですから。とりあえず前日は穏やかな心境で迎えられたら幸せだと思うけど、多分無いと思います(笑)

−公演前は演出家の方も緊張するものなのですか?(附田泉からの質問)

松本 
「幕が上がる前」ってことですよね?やっぱり緊張しますね。想像してもらうと分かると思うんですけど、役者さんと同様にやっぱり演出家にもある種の「緊張感」があります。役者さんは緊張感と共に「アドレナリンが涌き出る」ってのがあるんですけど、演出家にはそれがないんですよ。完全に終わったってわけじゃないんだけど、幕が上がる前の段階で演出としての仕事は終わってて、後は役者さんやスタッフさんに任せて、何も出来ない。これが一番つらいです。変な緊張の仕方をしますね。胃酸が出ます(笑)すっぱいです。トイレかなんかに閉じこもってひっそりとしていたい(笑)

−公演直前はどんな風に気合を入れるのですか?(チロルからの質問)

松本 
役者さんは色々なやり方で気合を入れると思うんですけど、演出家はむしろその気合を「いい感じで整える」役割をしますから、「気合を入れる」というよりは逆に「落ち着く」という感じですね。
本番前に「ゲネ」っていう本番とおんなじ形で行う「最終リハーサル」をやるんですけど、例えばスケジュールが押しちゃって(予定時間より遅れて)、ゲネが終わったらもうお客さんが並んでるっていうようなときは、もう気合を入れる必要は無いので、むしろ「落ち着けおまえ」、「あと何かすることあるか?」とか「客席にごみが落ちてる!拾わなきゃ!!」って思ったりとかしますね(笑)あと掃除機もって客席を走り回ったり。演出家として気合を入れず、落ち着いていますね。

−『コンクリートダイブ』の初日の幕が開く直前、どこで何をして何を考えていると思いますか?(あづさからの質問)

松本 
これ、誰の質問ですか?あ〜、いい根性してんな(笑)受付や客席でバタバタしたり、楽屋に何か必要な物を届けに走ったりと「走り回って」ます。いわゆる「雑用」ですね。一般的な演出家の何たるかを求めて質問したんでしょうけど、そんな余裕はありません(笑)さっき言ったように「客席にゴミが無いか」とかを調べてたりして、考えている余裕なんてありません。あと、「最後の悪あがき」で楽屋に行って役者さんにアドバイスをしたりとかします。でも、露骨に嫌な顔をする役者とかいますからね。女性です、誰とは言えませんが(笑)

−今回の『コンクリートダイブ』を演出する上で「気を使ったところ」はどこですか?(宇田川美樹からの質問)
松本 
前にも言いましたけど、「スピード」と「勢い」ですね。あと、「テンションを高いところで持続する」、簡単に言えば「役者が疲れる状況」をずっと創り続け、「お客さんがあくびをしない空気を作る」っていうのが大変ですね。猪木さんの言葉じゃないですけど「元気があれば何でもできる」とよく役者に言うんですよ。ちょっとでも気が緩んだり、全体の士気が下がってたりすると、途端に「元気の無い芝居」になってしまいますからね。元気が無くなるとこの台本が死んだ様になっちゃいますから。そこですね、気を使ったところは。最後まで気を使うでしょうね。

それでは最後に、「観に来てくださるお客様に一言」お願いします(富沢謙二からの質問)

松本 
今回のタイトルの話をあいたときにお話したと思うんですけど、この『コンクリートダイブ』というタイトルは、「コンクリート=都会」に「ダイブ=飛び込む」っていうことで、「エネルギッシュに都会を走り回り、飛び込んでいく人達」っていう意味で付けたんですよ。

そういう意味で、役者自身もエネルギーを使う台本ですね。寒い冬には丁度いいかなって思います。この真冬の寒い中、お客様が劇場にいらっしゃって、半そで一枚で走り回る役者達の姿を観て、「熱気」を感じていただければなぁって思います。それがこの作品の売りですからね。
ネット特典も評判が良いんで追加するみたいですしね。その特典には僕も一枚かんでいて、非常に面白い仕上がりになってます。是非ネット予約を!(爆笑)


―それでは、6週間ありがとうございました。
松本
 ありがとうございました!!

6週間このインタビューをご覧になった方には、
きっと『コンクリートダイブ』の作り方が分かったはずです!!
この全ての要素がひとつになったとき、どのようなものが出来上がるかは、
劇場でのお楽しみということで…。それでは!

       劇場でお待ちしております!!

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