このインタビューは、6Cメンバーからの質問に松本陽一が答えるという形で進みます。
メンバーすら知らなかった彼の歴史、行動、思考、策略が全てが分かったとき、
『コンクリートダイブ』の全貌が見えてくるはずです。
これを全部見れば、『コンクリートダイブ』の作り方がばっちり分かります!!
これで、よいこのみんなも『コンクリートダイブ』が作れる・・・かも。
―それでは、今回は『コンクリートダイブ』の「現場作業員」とも言うべき、「登場人物(キャラクター・キャスト)」について松本陽一さんに色々お聞きしていきたいと思います。よろしくお願いします。
松本 よろしくお願いします。
―今回『コンクリート・ダイブ』のキャスティングは難航しましたか?(名賀谷純子からの質問)
松本 6番シードのキャスティングの仕方は、「まず最初に台本がドンと来る→1週間くらい読む期間が与えられる→オーディションをする」っていう形なんですよ。「オーディション」と言うと大げさですけど、役者から「この役を読ましてくれ」、逆に僕から「あなたこの役を読んでみて」みたいな…そんな感じで稽古をやりながらキャスティングをしていくんですよ。
大体2、3週間で決まるんですけど、キャスティングはいつも難航します。結構面白いですね、キャスティング期間っていうのは。色んな人が色んな役を読むから、「ああなるほど」なんて楽しんでいるうちに時間が過ぎちゃう感じですね。それで、いつも気付いたら「あれ?やばい!?」「あれ?決めなきゃ!!」みたいな時期になってて(笑)
ただ、役者さんの方は必死ですからね。「役がもらえるかどうか」って話ですから。今回に限らずいつも難航します。大変です(笑)
―最初から「この役者はこの役」ということを考えながら書いたりすることはあるんですか?(齋藤恵からの質問)
松本 例えば、今回主役の「梶本」という役を決めるときにも、色んな人が演じる「梶本」を見ましたね。見る分にはタダですし、そういう「可能性を探る」みたいな意味で、このやり方は結構好きですね。
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―今回はキャスティングをする際どんな所を重要視したんですか?(チロルからの質問)
松本 「今回だからこうした」というのはあんまり無いですね。いつも「その世界に一番ピッタリくる配置」にしますから。ただ、前回初めて6番シードの芝居を観たお客さんとかが、「いい芝居したあの役者さんが、今回どんな役をやるんだろう?」みたいな期待をしてくれますよね。そういうのを裏切っていきたいですね。「今度はこんなにおしとやかな役かよ」とか、「今度はおばあちゃんかよ」とか。お客さんとしてはそういうのが面白いでしょ?
僕も外から観ている一人ですから、ある意味「お客さんの代表」みたいな感じで観てるんですよ。だから、「前回あれだけはじけた小沢和之をこんな風にしてやろう」とか、そういうのを考慮しながらキャスティングしたりしますね。
―今回のキャスト陣に自信は有りますか(小沢和之からの質問)
松本 これは「ない」と言ったら大問題でしょう。…とだけ言っておきましょう(笑)たまに、キャスティングの時にはすごくいい演技をしてきて「いいぞいいぞ!」って思ってたのに、キャストが決まった途端すごく気を緩めたりするような奴がいるんですよ。「あー役もらったもらった」って感じで台詞も覚えやがらない。そういう奴がいたら「降ろしてやろうか」と思いますよ本当に。
今まで降ろしたことは無いですけど、今後気合の入ってない奴がいたら降ろしますね。いい意味で裏切ってくれて、「うわ!こんなに良くなった!」っていうのはすごいうれしいんですけど、逆は嫌ですね。「あんなに良かったのに…何故君は今そんなに大した事ないの」みたいな。あれ?なんか今横で聞いてる役者達が「やばい」って顔してますね(笑)
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―今回のキャスティングで、注目すべきところは何ですか?(名賀谷純子からの質問)
松本 「見所」ですか?やっぱり、どのキャラクターにも有ると思いますよ。ホームページの企画で「アンケート人気ナンバーワン」っていうのがあるんですよ。これは昔「お客さんのアンケートでの人気を集計したら面白いんじゃん」って冗談で言ったところから始まったんですけど、今では結構役者が意識するようになっちゃって、「ナンバーワンを絶対取るぞ」みたいな流れになってますね(笑)
でもやっぱり、どんな役回りでも、いい芝居をしてたらお客さんの目を引くんですよね。主役だから取れるっていうわけじゃないですね。宇田川美樹なんて「2分ぐらいの登場でナンバーワンを取った」っていう伝説を残してますし。そういう意味では、「誰が一番輝いていたのか」っていうのは、最終的には「本番を終えたときにどうなのか」ってことなんでしょうね。
―キャラクターを書くときに、もっとも気を使った点は何ですか?(春日雄大からの質問)
松本 主人公2人が男で、「男の話」ですからね。やっぱり今までとはちょっと違いましたね。ある種台詞が「乱暴」な感じです。悪い言い方をしたら、「言葉が雑」というか「言葉が汚い」というか…。舞台もいわゆる「ガテン」な場所ですから。
言葉がすごく悪いんですけど、僕は「下品な感じ」っていうのが好きなんで、あえて言葉遣い悪い「男たちのエネルギー」みたいな、そういう描き方をしている部分がありますね。そういうキャラクターがメインなので、「そうじゃない」その他のキャラクターを描くときに、「落差」をつけたいというか、「多彩なキャラクター」を描きたいっていうのはありましたね。「工事現場に来そうにない人が来たり」とか、そういう「見た目にも性格的にも色鮮やかな感じ」っていうのを考慮しながら書きましたね。
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「似たようなメガネかけたサラリーマンの男が10人そろった」みたいな芝居とか嫌じゃないですか。まあ、それはそれで面白そうな芝居ですけど(笑)「太った人」がいて、「やせた人」がいて、「男」がいて、「女」がいて、「まじめな人」がいて…そういう「バランス」って有りますよね。やっぱりそういう「キャラの書き分け」っていうのは考えますね。
―「本当は出演させる予定だったキャラクター」とかはいるんですか?(あづさからの質問)
松本 いますよ。第一稿(校正前の台本)をスタッフの方に渡した時の登場人物表には、「テレビリポーター」と「テレビディレクター」っていう役がいたんですよ。そいつらが「途中からやってきて生中継だなんだって騒ぐ」って感じで、「更に工事現場が忙しくなる」というような流れを考えてたんですよ。でも、そうすると登場人物が多すぎて「見せ場が一体どこなんだか」って感じになっちゃったんで出しませんでした。
そのキャラクターはなんとなく出来上がってはいたんですよ。「テレビ業界のいわゆるちょっと海千山千の男の人」と、「アイドルみたいな可愛らしい天然系の女の子」のコンビっていう感じで。でもまあ、いつかは使ってみようかなと思ってます。せっかく考えたんだから、もったいないことはしたくないので、使い切ります(笑)
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―登場人数はどうやって決めるのですか?(栗原和滉からの質問)
松本 「今回は何人出そう」って決めるわけではないんですよ。「たまたま話が進むにつれて出て来る必要な人数」そういう数ですね。だから、ストーリー上2人しかいなきゃ2人ですし、30人必要なら30人になるという訳です。まあ、もちろん100人って芝居があって100人舞台に乗せるわけにもいきませんから、当然上限が有るんですけど。単純に、「物語を書き進めてて出て来る人数」。それだけです。
―お客さんから見た「見栄え」を考えて、登場人物を増やしたり減らしたりすることはあるんですか?(富沢謙二からの質問)
松本 今回で言えば、例えばさっきお話した「テレビリポーター」とか、これ以上キャラクターが出てくると、「人数が多くて見栄えが悪い」と言うよりも、ストーリーが膨らみすぎて、上映時間が「3時間」とかになっちゃうんですよ。…と言う意味で、泣く泣くカットしたというわけです。
―登場人物は「みんな我が子のように可愛い」と思ったりしますか?(嘉山理絵からの質問)
松本 多分それは公演が終わってからでしょうね。今役者が演じてるでしょ。それを「可愛い」とか「子供」とか言ったら「うへっ」て感じでしょ(笑)今は「役者に預けている」って感じですね。まあ、「預けている」と言うよりも、最終的には「役者にあげる」って感じになるんですけどね。
書いてるときにはすごく「愛着」はあるんですよ。でも、役者に渡してしまった後は、なんかもう頭にくることばっかりですね。「こんな奴じゃないんだ!もっとイキイキしてるんだ!」とか、「この子はいい子なんだ!もっとやれる子なんだ!」って感じでね。でも役者は「出来ないよ」っていう感じで…。本当に頭にきます(笑)
でもまあ、逆に「いい子になった」って言うか、自分が書いていたキャラからはある種脱線して、役者の個性で「キャラの個性」が強くなっていって、いい意味で膨らんでいくっていうこともありますね。「最初思っていたのはこんな人じゃないけど、これで作り上げたら面白いかもな」っていうものも結構ありますね。
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妹尾伸一なんて「野生児」みたいな男なんで、言うこと聞こうとしないんですよ。だから、好き勝手やらしておく方が面白かったりしますね。まあそういう意味では、「元々書いたタクシードライバーはあんな役じゃない」って気はしますけど(笑)
でも、そういう役者の方が、台本を書いてる途中だったら「見せ場を作ってやろうかな」と思ったりしますね。まあ、そういうことはたまにしかないですけど。逆に、「駄目な芝居をしている役者の台詞が減る」っていうことはよく有ります(笑)
―今回の登場人物で「一番好きなキャラクター」とかはいますか?(名賀谷純子からの質問)
松本 いつも公演が終わった後には誰かいたりするんですけどねえ…。まあ、現時点は「演歌歌手の女」ですかね。彼女なんかは「好き勝手にやってる」感じで、台本上で暴れ回ってくれてるんで好きですけど。今は「強いてあげれば」って感じですね。終わってから変わるかもしれないですね。
―今回の登場人物の中で、「自分がやってみたい役」はありますか?(あづさからの質問)
松本 書いてる途中では、「謎の男」っていう役は、「僕でも演じられるかな」って思いながら書きましたけど。無いですね今は。演出しはじめたからですかね。
主役の「どろぼう」の役なんて全くもってやりたいとも思いませんね。出ずっぱりだし、台詞が多いし。ああいう役は嫌いです。役者としては(笑)逆に、「現場作業員のおじさん」っていう役があるんですけど、ああいうのは「やってもいいかな」って思いますね。ああいう感じで「ボソっ」と出るのもいいかもしれないですね。「脚本・演出やりながらこっそり出てる」っていう(笑)
―自作品に役者として出演することは考えていないのですか?(妹尾伸一からの質問)
松本 どうでしょうね。「そのときの流れで」って感じですね。ただ、演出の仕事は結構大変なんですよ。だから、他の劇団とかで「脚本・演出しながら主役やる」っていう人もいますけど、僕には出来ないですね。さっきの「おじさん」みたいな役で、「こっそり出てる」って方が面白いですね。「あ!いた!」のみたいな感じで。
―「演じてる感覚」と「演出している感覚」は違いますか?(平洋太郎からの質問)
松本 もちろん違います。演じるときは、自分が楽しんで、その場で「がーっ」とやればいいだけなんですけど。演出するときは、外から「お客さんの代表」として見てるような感じなんで、もう全然違います。おかしいとこを「おかしい」って言わないといけないんで。演じてるときは「のびのびとやればいい」って感じですからね。
さっきお話した「おじさん役」とかやるんだったら果てしなく楽しみますよ。でも、舞台の上に立っちゃったら外からは見れませんからね。その両方の目を持つ事は出来るんでしょうけど、難しそうですしね。
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―6番シードの全ての役者に「望む事」は何ですか?(春日雄大からの質問)
松本 すごい深い質問ですね。望む事……(長考)この質問をひっくり返すような答え方ですけど、「僕(演出家)の望むようにすればいいんだって思わないで欲しい」ってことですね。「僕(演出家)が求めているものに答えればいいんだ」って受け身の芝居をしないでほしいですね。「好き勝手にやるのを調節する」のが演出の仕事ですから。
そうやってキャラクターが個性的になっていって、「ごった煮感」が出てくればいいなと思ってます。「こっちにはカレー味がいて、こっちにはキムチ味がいて、こっちにはポン酢しょうゆがいて」っていう。みんなの多彩な味が全部「ズドーン」ってあって、グチャグチャになって。でもまずくなっちゃいけないっていう…。そういう「いろんな味をぶつけ合う」っていうのが、一番楽しいと思ってます。僕の好みが「ポン酢しょうゆ」だからって、みんなが「ポン酢しょうゆ」になったら面白くありませんからね。
だから、質問とは逆になっちゃいますけど、「僕が望んでいる事をやらないようにしてください」って感じです。
―それでは次回は、「小道具・衣装など」についてお聞きしていこうと思います。ありがとうございました。
松本 ありがとうございました。
続く
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