このインタビューは、6Cメンバーからの質問に松本陽一が答えるという形で進みます。
メンバーすら知らなかった彼の歴史、行動、思考、策略が全てが分かったとき、
『コンクリートダイブ』の全貌が見えてくるはずです。
これを全部見れば、『コンクリートダイブ』の作り方がばっちり分かります!!
これで、よいこのみんなも『コンクリートダイブ』が作れる・・・かも。

―それでは、今回は『コンクリートダイブ』の「足場」とも言うべき、「舞台美術」について松本陽一さんに色々聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。
松本 よろしくお願いします。

−ストーリーを書く時に舞台美術(舞台となる場所・設定など)をイメージしながら書いたりするんですか?
(田中寿一からの質問)
松本
 イメージしますね。僕は大体劇場が決まってから書き始めるんですよ。
舞台の裏に楽屋に通じる道があって、それが「上手にあるか」とか「下手にあるか」とか、そういう「劇場の特性」ってありますよね。そういうのでかなり舞台セットのイメージって変わったりするんですよ。「ここに出はけ口(舞台への出入り口)の扉を作っても大丈夫かな」とか「この劇場ならこういうのができるなあ」とか考えたりしますね。あとは高さとかもポイントになりますね。
でも今回は、セットのイメージがが先だったかもしれません。役者達と話している時に「建築現場で立体的に上と下で芝居するようなのをしてみよう。工事現場の足場が組んであって出はけ口は上しかない、上から出てきて上に帰っていくような芝居って面白くない?」そんな話から始まりましたね。


−セットは「大まかな作り」と「色合い」とどちらが先に浮かびましたか?(嘉山理絵からの質問)
松本 今回は「作り」ですね。例えば、『ホテルニューパンプシャー206』だったら、舞台がラブホテルだったんで、「大きなベット」、「出はけ口の扉」、「シャワー室」、「盗撮してる人が忍び込んでいる回転式鏡」っていうのが作品で重要な要素で、「その4つをどう配置するか」それを考えるところから始まったんですよ。
今回も「11階建てのビル」っていうのをいかに舞台で表現するかっていう構想から始まりましたね。色合いは美術さん(吉本伊織)に任せている部分があるんですけど、イメージとしては「グレー」って感じですね。「コンクリートジャングル」みたいなイメージもありますね。「鉄骨ジャングル」っていうか、「ジャングルジム」っていうか…。
そんな感じで、「鉄骨がわんさかあるところを役者が走り回る」みたいなイメージはありました。

−松本さんは「具体的なセット」を描くことが多いようですが、今後「抽象的なセット」を舞台にした作品を書くことはあると思いますか?
(宇田川美樹からの質問)
松本
 よくある「素舞台」だったりだとか、「箱が2個置いてあって、それがイスになったり」だとか、抽象的な舞台で「お客さんが空想する面白さ」っていうのは、舞台だけの醍醐味の1つだとは思います。
でも、今のところは考えて無いですね。個人的におもしろいなあと思った時期はあったんですけど、最近の僕の流れは違いますね。
「リアルなんだけどちょっと抽象的」ぐらいがいいんじゃないかなと思っております。


−舞台美術を考えていく中で、「最も大事にしていること」は何ですか?
(田中寿一からの質問)
松本
 「勢い」ですかね。「どーん」ってくる感じ、「わー」ってくる感じ(笑)そういう漠然としたイメージですね。
まあ、それだと周りが困るんで、色んな事を計算したりはするんですけど(笑)
劇場に入ったとき、薄暗い中でセットが見えてるでしょう。あれって結構ドキドキするじゃないですか。「そこで何が起こるんだろう」って思わせるようなセットを作りたいですね。


−今回は「アクションコメディー」なので動きが多いですが、他にアクション系で使ってみたい舞台設定はありますか?
(栗原和滉からの質問)
松本
 5年はアクション書きません(笑)疲れたから、もういい(笑)
…まあ、冗談はさておき、前の2作(『ホテルニューパンプシャー206』、『ミキシング・レディオ』)は「一幕劇」にこだわってきたんですが、今回の『コンクリートダイブ』はそれを取り払って、「シーンを変える芝居」を書きました。
大体、普通10幕ぐらいで終わる芝居が多いんですけど、今後「映像みたいに100幕ぐらいのを作ってみよう」っていう考えはありますね。


−ハリウッド映画並の予算が組めるとしたら、どんな舞台を造ってみたいですか?(平洋太郎からの質問)
松本
 お金はあればあるほどいいですね(笑)そんな裕福な劇団でもありませんから、予算の制限がありますからね。
お金があったら、舞台上での「爆破」とか面白そうですね。スーパー歌舞伎では滝が流れたりしてるじゃないですか、だから爆破も出来なくも無いと思ってます。

−今まで見た舞台の中で、「この舞台美術は面白いな」と思ったものはどういったものですか?
(妹尾伸一からの質問)

松本 「扉座」っていう劇団の「怪人二十面相」の話の舞台美術ですね。
最初の舞台は「怪人二十面相の家(古びた洋館)」という設定だったんですよ。それが、どんな仕掛けかわからないんですが、音と衝撃と共にたったの二秒で「廃屋」に変わったんですよ。とにかく凄い仕掛けで、これにはびっくりさせられました。
そういう大掛かりな仕掛けはやってみたいと思いますね。


−「こんな小屋(劇場)がとれたらこんな舞台をやってみたい」というものはありますか?(平洋太郎からの質問)
松本
 ありますね。「シアタートラム」はやってみたい小屋です。
舞台の内容については秘密なんですが、このインタビュー記事が掲載されてから、とれたらいいですね(笑)


−6番シード舞台美術「吉本伊織」はどんな人?
(田中寿一からの質問)
松本
 彼は、今年の夏に長野県で「廃校を使った展覧会」を開いたような、「バイタリティ」のある人ですね。
とにかく「負けず嫌い」で「向上心」のある人間、6番シードには不可欠な存在ですね。


−現段階、製作中ですが、舞台美術の仕上がりには満足いってますか?
(チロルからの質問)
松本
 今、ちょうど骨組みが出来あがってきてる感じなんですよ。
「美術班と大道具班が今後どう肉付けするのか」、「これからどうなっていくのか」って感じで、非常に楽しみにしてます。


−今回の舞台美術の「テーマ」は何ですか?(附田泉からの質問)
松本
 「鉄骨ジャングル」です。「猥雑」とか「ぐちゃぐちゃ」とか、そういうイメージですね。
実際にはそうはいかないんですが、「舞台にいっぱい物が置いてあって、役者はどこに立ってどう芝居していいか分からない」っていうような、そういう舞台になればなと…。アクティングエリア(役者が演技をするスペース)を取り払う、「アクティングエリア無し運動」をしようと思ってたぐらいですからね(笑)
でも、今回は登場人物が大人数ですから、お客さんが窮屈に感じない程度の、「少なくとも人数分は立てるエリア」は必要になっちゃったんですけどね(笑)


−ずばり「今回の舞台美術の見所」は何ですか?
(附田泉からの質問)
松本
 「立体的な足場と雑多なスペース、そこを役者が走り回る」。それが見所ですね。
「舞台美術」と「役者」が織り成す『総合的な芸術』、それを表せればいいかなと思っています。


―それでは次回は、「登場人物」について迫っていきたいと思います。ありがとうございました。
松本
 ありがとうございました。

                                                 
続く

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