このインタビューは、6Cメンバーからの質問に松本陽一が答えるという形で進みます。
メンバーすら知らなかった彼の歴史、行動、思考、策略が全てが分かったとき、
『コンクリートダイブ』の全貌が見えてくるはずです。
これを全部見れば、『コンクリートダイブ』の作り方がばっちり分かります!!
これで、よいこのみんなも『コンクリートダイブ』は作れる・・・かも。
―それでは、今回は『コンクリートダイブ』の「現場責任者」である松本陽一さんの「素顔」に迫るということで、松本さんに色々聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。
松本 よろしくお願いします。
―さっそくですが、なぜこの「芝居」の道を選ばれたのですか?(チロルからの質問)
松本 元々広島から上京してきたときは、映画監督になろうと思って上京してきて、横浜にある「大船撮影所」っていう昔ながらの映画学校に入ったんですよ。舞台の方は、その映画学校にいるときに6番シードの昔のメンバーの人と出会いまして、「舞台やってるからちょっと手伝ってよ」って言われて、「面白そうだな」と思って首をつっこんだのが始まりですね。役者になるつもりとか全然なくて、裏方で手伝ってほしいって言われたのかと思って参加したんですよ。ところが当時の6番シードは役者が全然いなくて、10人出演する芝居なのに8人くらいしかいなくて、「人足りないからおまえ出ろ」って感じでデビューした次第でございます(笑)それも芝居の道としては勉強の一つになるかなと思って「せっかくなら」って感じでやってみました。まあ、あんまりいいもんじゃなかったですねデビュー作は(笑)
―役者をやられていた松本さんが、演出をしようと思ったきっかけはなんですか?(齋藤恵からの質問)
松本 舞台の方は書くつもりも全くなかったですね。しばらく映画学校に在籍してて、そこでは監督として撮影をやってたし、そして卒業してからも自主制作で自分で撮ったりしてたから、それと「舞台の役者」って感じで両立してみようかなと思ってたんですよ。ところがある日、酒の席かなんかである女優に「書いてみれば?」って言われて、「じゃー書いてみっか」ってなったんですよ。
―「役者」、「脚本」、「演出」の中でどれか一つを選ばなければならなくなったとしたら、どれを選びますか?(嘉山理絵からの質問)
松本 「脚本」ですね。こういう言い方をすると役者のみんなに怒られそうですが、僕自身「役者」として、実にいい加減に演じてたものですから(笑)ある種「役者」というのは僕にとって楽しむ場でしたから。「演出」はつらいことばっかりなんで…。
―「脚本」が一番好きということですか?(平洋太郎からの質問)
松本 そうですね。でも、厳密に言うと「自分の書いた作品を形にしたい」っていうことが一番やりたいことなんですよ。だから舞台では「脚本・演出」、映画だったら「脚本・監督」っていうことになりますね。自分がやりたいと思うストーリーを想像することが一番好きなんですよ。そしてその先にそれを具体化して作りあげなきゃいけないっていう仕事があって、それも一緒にやっていくわけですね。そうしないと想像するだけで終わっちゃいますからね。だから、「どっちが先か」っていう意味で「脚本」って感じですね。
―では、「脚本と演出が別の人」という形をとるつもりはないんですか?(田中寿一からの質問)
松本 どうでしょう?僕としてはあまり希望はないんですが、将来そういう形で仕事する機会があれば、それはそれで面白いんじゃないかな、とは思います。
―「演出家冥利に尽きるとき」はどんなときですか?(嘉山理絵からの質問)
松本 よく聞かれるんですが、あまりないです。役者だったら幕が開く瞬間だったり千秋楽が終わった瞬間だったり、そういう瞬間があるんですけどね。まあそういう瞬間はもちろん嬉しいんですけど、演出家っていうのはもっと「ダラダラ」した感じですね(笑)役者は楽屋でメイクして、お客さんが劇場に入って、「はいスタート!」って感じで始まって、2時間後には「はい終わり!」って感じじゃないですか。でも演出家は、そういう始まりとか終わりとかがない「アバウト」な感じですね。
―自分が役者をやるとき、自分のような演出家と一緒にやってみたいですか?(あづさからの質問)
松本 うーん。嫌でしょうねー。僕は自分ではそんなに嫌な演出家ではないと思ってるんですけどね。まあ、本当のところは6C役者陣に聞いてみなきゃ分かんないでしょうけど…。でも嫌だと思いますよ。僕自身、役者のときは演出家にどうこう言われると心密かに頭にくる役者で、「あんまり言うこと聞かないで演出家をねじ伏せたいな」みたいな野望を持って芝居をしてたものですから。僕はそんな役者は使いたくないし(笑)
―芝居以外で興味があることは何かありますか?(富沢謙二からの質問)
松本 僕は基本的に無趣味・無特技男です。趣味といえば、「映画を観ること」とかあるんですけど、芝居の参考にしたりとかするので、今となっては完全に趣味とは言えないところがありますね。完全に「芝居」を離れてっていうものは、本当に何も無いです。趣味とか持ちたいと思いますね。まあ、脚本をやってると何をしても参考になるから、どこまでいってもついてはくるもんなんでしょうけど…。そういうものをすっかり忘れて「気持ちリフレッシュ!」みたいな、そういうのができる人ってうらやましいですね。昔は競馬に燃えたりしてたんですけど、芝居を始めてからは、それまで熱くなってたものを全部芝居に注いじゃってるんで、他のことをするエネルギーが残ってないんですよね。「松方弘樹の釣りはすげーな」とか思いますね。僕も釣りやってみましょうかね。…やっぱムリだ。「のんびり待つなんて気が知れない」って感じなんでね。スポーツも嫌だし…。本を読むのが好きです。
―松本さんにとって、「芝居作り」の中での演出家とは、どういったものなんでしょうか?(あづさからの質問)
松本 前回(『ミキシング・レディオ』)のときはサッカーの監督なんて例えを使いましたが、監督というのもサッカーチームの中での「1つの駒」であって、演出も役者と同様に、舞台の中での「1つの駒」だと思いますね。演出家が「すごい」とか、「偉い」とかいうイメージを持ってる方もいらっしゃると思うんですけど、あまり大げさに考えないようにしてます。割と「一人の役者と同じくらいの仕事量」っていう気持ちでいますね。
―元々は「映像畑」で育ってきた松本さんですが、「映像芝居と舞台芝居の違い」は何だと思いますか?(宇田川美樹からの質問)
松本 昔はすごい違うと思ってたんですけど、最近はあまりそう思わなくなってきましたね。もちろん発声という意味では違いますよ。映像だと声は張らないし、ボソボソ言ったってマイクさんが拾ってくれますからね。でも、「役者の芝居」という意味ではそんなに変わらない気がしてます。「グッとその役に集中する力」みたいなものをどう発散させるかということだけですからね。映画やドラマでの何気ない会話なんかでも、グッと集中してサラリとやってるような役者さんが、実はすごく上手な役者さんなわけで。ただ観てるだけだと、普通にリラックスして素の自分でやればいいんだって思っちゃうんですけど、それだけじゃないっていう風に思いますね。舞台でもミュージカルみたいに踊ったりとか、中には「ずっと絶叫」とかいう舞台がありますけど、僕は舞台なりの大きさの芝居を作るっていう考えはもちろんあるんですけど、そんなに「舞台ならでは」みたいなものを意識したりはしませんね。そのまま映画になってもいいくらいの感じでやってます。「演出」という意味では、舞台と映像では多少は違うとは思うんですが、「役者」はそんなに変わらないと思いますね。「声の大きさがちょっと変わる」くらいのもんですかね。
―影響を受けた人物、作品などはありますか?(春日雄大からの質問)
松本 いっぱいあるんで、どれか一個っていうのは難しいですね。割と一般的なものが多いですね。よくこういうインタビューで「イタリア映画のなんとか」とか「フランス映画のなんとか」とか答えたりしますけど、僕あんまり知らないんで(笑)「ダイハード」とか好きですね。最高だと思います(笑)
―芝居を作る上で、験(ゲン)をかついだりすることはありますか?(名賀谷純子からの質問)
松本 役者さんとかで、「楽屋には左足から入る」とかいう人がいますよね。僕自身はそういうのは特にはないんですけど、好きですねそういうの。だから、かついでる人を見たら「なんかいいなー」って思いますね。僕が役者をやってた頃、千秋楽が終わって劇場から帰るときに、メンバーの丸山が舞台に向かって柏手を打って帰るというのをやってたんですよ。だんだんそれが劇団内で普及して、最近では全員でやるような形になっちゃったんですけど(笑)劇場って怖いんですよねなんか。「舞台の神様」とか「舞台に潜む幽霊」みたいなものがいそうなんですよ。だから、そういう「何か」に挨拶をしたりとか、そういうのが好きですね。
―本日最後の質問です。「これだけは誰にも負けない」というものは何かありますか?(栗原和滉からの質問)
松本 胸を張ってすぐに「これは!」ってポンと出るものはないですね。うーん(長考)役者とか演出家って、やっぱり自分から「前へ前へ」の人の集まりじゃないですか。僕も自分では負けず嫌いだと思ってるんですよ。そういう意味で、いろんな面で負けたくないなーとは思ってますね。「これだけは!」って胸張って言えることはないです。ありません(笑)そういえば、少し質問からはそれるかもしれませんが、昔何かの講演で大島渚監督が「スタートの声は誰にも負けない大きな声を出す」、「あれが言えてる間は何歳になっても僕は監督でいられると思うんだよね」ってことを言ってたんですよ。それが頭の隅にあって、とりあえず稽古をやるときに「よーいハイっ!」って声はどの役者よりもデカい声を出したいなーっていうのは思ってますね。今日は二日酔いなのであまり大きな声が出なかったんですけどね(笑)
―次回は「ストーリー」についてお聞きしていきたいと思います。それでは、ありがとうございました。
松本 ありがとうございました。
続く
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