再演ということですが?
いままでもいくつかの作品で再演をしてきて、前にやった作品や自分がやった役とか引きずっちゃうところがあるんですけど、今回はないですね。すごく新鮮に台本が読めています。今すごくいい時間を過ごしています。
僕は逆に前の役を引きずっちゃってますね(笑)。でもこの4年半に積み重ねてきたことを表現することが出来るという意味で、とても楽しみにしています。
役者のお二人はこのように仰っていますが、演出家としてどうですか?
基本的に再演は好きなんですよ、やりやすいし。当然台本が既にあって、演出に集中できますからね。特に今回のこの作品については6番シードのために書いた10作品のなかでも一番仕上げていくのに手間のかかる作品だと思っているんです。だから、初演のときは細かいところまで仕上げ切れなかったという、そういう気持ちがどこかに残ってて、そのリベンジ戦(笑)。今回はじっくり演出に力を入れていきたいと思っています。初演が2週間前だっけ?台本があがったの。役者のみんなにも苦労させちゃったし、自分でももっと出来たという思いがあるので、今回再演できて嬉しく思っています。
どの台本もそうですけど、やり残したことってあるじゃないですか。この作品もそこに挑めるのがいまから楽しみですね。
この作品は特別な言い回しというか、普段僕達が使っているのとは違う言い回しが多いので、初演でやっていたときは、そのへんで大変苦戦しました。言い慣れていないので、普通に相手にかける台詞で、本当はもっとナチュラルにかかるはずの言葉が、きちんと聞き取ってもらえてるようにとか、伝えることばかり気にしてしまいましたね。今回はもっとその時のその人の人間くささを出せたらいいなと思っています。いわゆる現代劇にでてくる人たちと同じで、ただ言葉がこの時代のものだっていうだけのね。
今回も前回もだけど、まずは漢字ですよね。みんな辞書引きながら台本を読んでいる。前回も新着台本がくると漢字の確認からはいってた(笑)。
面白いのはそういう時代物をやっていくうえで、言葉とか漢字とか現代物にはない問題があるから、確かに昔の話なんだなって思うじゃない。遥かいにしえの話なんだなってね。でもその反面、ちょっと堅い話になるけど、このところの世の中の情勢をみてると人間のやることっていつまでたってもかわらないんだなと思うのね。例えばイラク戦争とかみてたらやっぱり力の論理で押さえつけようとして、それに反発する人たちがいて、それが平行線をたどっている。それって昔と一緒なんだよね。人間って進歩がないなって痛感する。普段そういうことをあまり考えない我々でも、台本と向かい合って否応無しに人間が生きていく姿をおっていくと、いまも昔も人間って変わってないんだなと感る。
今回台本を読み始めてから思ったんですけど、いい時期にやれる演目ですよね。初演のときよりも、いまこの世界観を出せたら面白いことになるんじゃないかなと思いました。4年半前はね、遥かいにしえの物語をやるって感覚だったんです。でも今はね…、うーん、なんかうまくいえないな。
初演の頃は民主主義の世の中でこういうことは起こりえないって感覚がどこかにあったんじゃない?あの頃は「現代」っていうものを信じていたんだよね。そんな理不尽なことが起こるわけはない、昔だから起こりえたんだってところがね。だけど、今は本当にめちゃくちゃ不条理だよね。だからそういう時期にたまたまこの作品を再演できるのは、まあ別に狙ったわけじゃないんだけど、なんか意味があるんじゃないかなって気がするね。終盤主人公のタジムが語るシーンなんて考えさせられるよね。書いた当時はそんなこと考えていなかったけど。
初演では台本を読んでいても聖者ラクサーダの台詞を「さすがに聖者はいいこというよな」って感じでしか聞けなかったんですけど、今はちゃんと意味をもってすーっと入ってくるようになりましたね。プチマサロ人(聖者を崇拝する民衆)状態ですよ(笑)。だから、今やる意味があるんだって思ったのかもしれませんね。
残念だけど、4年半前より今のほうがそういうことが身近にあるってことだよね。
現在キャスティング期間ということで、前回の自分の役や、その他の役も演じていますよね。どんな感じですか?
僕は楽しんでいますね。さっきも言ったように年月がすごく新鮮にしてくれたので。ただやっているとやっぱり昔の感覚が出てきますね。「あ、前にこのダメだしされたな」とか「この台詞はここを立てるんだって言われたな」とかね。細かいことをちょっとずつ思い出したりしています。
自分が成長したなと感じたり?
いや、逆に僕は退化してますよ(笑)。いまリハビリしているつもりなんです。
僕もね、昔もらったダメだしを思い出します。
そうなの?
読みながらここはああだった、こうだったって。結構書き癖があったんで(笑)。初演でやった役や別の役を読ませてもらって、月日がすこし自分の中で余裕の気持ちを作ってくれたのを感じました。余裕っていうのは言葉が違うのかもしれないけど、他の役でもこんなキャラクターでもいいんじゃないかとか、今は違う角度からも見えるんですね。昔は台本もあがったばかりだし、あまり考える余裕がなかったんですが、いまは台本があるのでいろいろ考えることが出来ます。
初演では終わりの方のシーンなんて、俺ほとんど見てなかったんだなって思います。自分の出番じゃないし、流してたんだなって。もちろん通し稽古とかで見てたんだけど、見てるつもりだっただけなんだなって。
あの頃はみんな余裕がなかったよね。
役者さんはね、そのときの自分の役に一生懸命じゃない。自分の世界を追及していくうえで、他の部分が疎かになるのは仕方ないのかもしれない。でも演出家から言わせれば、他の役者の芝居も見て、それでひとつの絵を作ってくれっていう思いもあるんだよね。だけどね、俺は本当に自分のやったことを反省しているよ、今(笑)。このシーンはもっと出来たのになんであの時やらなかったんだろうっていうのがね。他の作品でもしょうがないかって部分が皆無なわけではないけど、この作品についてはめちゃくちゃ多い。とにかく前回見てくれた人にまったく違う芝居だって思ってもらえるような芝居を作っていきたいです。本当の「露の見た夢」はこれなんですって。もちろん初演でもアンケートで「よかった、泣けた」って書いてくれた人もいたけど、でも今回はそれ以上のものができると思ってます。
うちの劇団には「露世代」っていうのがありまして、当時呼んだエキストラでその後メンバーになって残っている若いやつらが何人かいるんです。そんなやつらがキャスティングでメインの役を争ってたりすると、出会った頃のことが浮かんできて面白いですね。
たくさんの出会いがあった作品だよね。その出会った奴らとその後の作品を作っていって。そのきっかけになった作品だからね。
マンパワーを感じましたね。こんな大所帯ではじめてやった芝居なので、初めはどんな烏合の衆になるのかと思いました。でも、生意気そうに入ってきた田中寿一とか妹尾伸一がね、気が付いたら知らないうちに夜中まで小道具の刀を作っていたりしてね。本番になったらみんなの力がさらにプラスになっていって、みんなが自分のできることを自分からやっている。そんな公演でした。
演出等はおいといて(笑)、ひとつのものを作り上げたというみんなの達成感はとても強かった作品だよね。それがあったからいろんな人が劇団に残ってくれたんだと思います。
小屋入りの朝8時まで色塗りしてましたからね(笑)。達成感はありますよ。でも今回はそれはなしでお願いします!
ということで、「露の見た夢」乞うご期待ということですね。
これぞ「露の見た夢」というものをお届けしたいと思っています。初演を観た方も初めての方もどうぞご期待ください!

 

 

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