第一章、第1節  「砂の都、アスカリナ」
            ―作品の世界観について―

「この身が土に返っても、誇り高き先祖の英霊と共に、彼らが築いたこのアスカリナの都に留まるのです」
     (第一幕、処刑場にて英雄ラクサーダが民衆に語りかける)

新境地とは?
 新作「露の見た夢」は、脚本家久間勝彦、そして6番シードとしても新境地といえる作品である。そこでまず、過去の6C作品群を分類してみることとする(図1)
 ジャンルとしては多岐にわたるようにも見えるが、コメディ色の強い作品は現代物、シリアス色は時代物(注1)と分類可能といえる。ただし、どの作品も最終的にはほっこり(注2)とした気持ちになれる作品というのは共通項としてあるようだ。

 注1―「桐の林〜」の時代設定は現代だが、少し時代がかった質感の作品なので時代物と呼んでもいいように思われる。少々強引。
 注2―実際の公演アンケートより引用。意味不明気味だが、心あたたまるといったように筆者は理解する。

新境地とは新しい世界を切り開くといった意味ではあるが、新作「露の見た夢」をこの分類表にあてはめてみると・・・。
設定―遥かいにしえの砂漠都市ということから「時代物」系統―時代物ということは「シリアス色」(注3)ジャンル―1人の男の数奇な運命(前回チラシに掲載された予告より)とあるので「運命系」となり「時代物シリアス色運命系」、つまり「紅い華のデジャヴ」(注4)が一番近い作品と言えるかもしれない。ただし、「運命系」がどんなジャンルなのかは深く考えないように。

 注3―ここでいうシリアスとは、暗くて悲しいという意味ではなく、コメディ色以外のストーリーと認識していただきたい。
 注4―96年初演。天豹や明蘭といった名前の登場人物から見ても分かるように、昔の中国(台湾)っぽい設定。ただし、作中でそうであるとは明言されていない。

都アスカリナ
作品世界想像図。脚本家未承認。サラガヤ
の国が広島県に似ているのは気のせいである。
 東方の国サラガヤ、砂漠都市アスカリナ、と登場する地名はカタカナ。他にはフワ―リズムという国名も登場する(図2)。場所は、東方の国、砂漠都市ということからシルクロードなどがイメージでき、時代も中世ということではあるが、場所同様明記はされていない。つまりあくまで「架空」の世界のストーリーなのである。ちなみにフワ―リズムとは昔実際にあった地名のようで、ネットの検索で引っかかるらしい。
 ここまで記すと、いよいよ本当に新境地らしさが見えてくるが、例えそういう世界の話ではあっても、「ほっこり」という共通項は変わらないのであろうか。いや、それすらも今は分からない。

 東方の国サラガヤ、都アスカリナの処刑場・・・。物語はここから始まる。

次週は、「砂漠の民、マサロ」
―登場人物について―
です。お楽しみに。