2003年度号外第1号  <号外>       (1)
夢が丘高等学校新聞部発行
発行責任者(部長)   君島 勉 (2年6組)
2003年
(平成15年)3月13日(木)発行
     

 最近、本校生徒の間で、「劇団6番シード」(6C)という劇団が評判になっているという噂が、本紙に飛び込んできた。
 そこで、本校新聞部を代表して部長・君島勉が、全校生徒諸君のために、その劇団の次回公演『ペーパーカンパニー ゴーストカンパニー』(略称は『ペパカン』)について、調査を行い、6回にわたって号外を発行することとなった。
 号外第1号目の今回は、君島部長が劇団を訪れ、突撃で取材を敢行し、『ペパカン』のストーリーについて脚本家・松本陽一氏に聞いた話を元に書かれた記事を中心にお届けしようと思う。



『ペパカン』発想の原点
 『ペパカン』の発想の原点、それはタイトルにあった。松本氏の話によれば、「タイトルが先に浮かんで、その響きがとても気に入って、どうしてもそのタイトルで脚本を書いてみたくなった」とのことである。
 2001年初め、松本氏脚本・演出第1弾の『ホテルニューパンプシャー206(2001年9月上演)』(以下『パンプ』)の上演される数ヶ月前から、松本氏はそのお気に入りのタイトルを使った作品を執筆するべく、構想を練っていた。そのとき考え出されたストーリーは、以下のようなものである。

『FUN TRAPS』
 「ペーパーカンパニー(幽霊会社)を経営する女社長。その社長&部下の<女3人組>が脱税や詐欺などいろんな犯罪を駆使してその会社を実在しているかのように仕向ける痛快コメディー」といった話である。しかし、その構想は、台本として陽の目を見ることはなかったのである。なぜならば、そのストーリーのコンセプト「<女3人組>が<犯罪を巧みに利用して>事態を切り抜ける<痛快コメディー>」というものが、『FUN TRAPS(2002年4月上演)』のストーリーコンセプトと丸カブりしてしまっていたからである。松本氏が「しまった!カブった!!」と思ってお蔵入りになったそのタイトル。そのタイトルが使われた台本が世間に登場するのは、最初の構想から2年の月日が経ってからのことであった。

4作連続「深夜」の「ノンストップコメディー」
 松本氏脚本・演出の前3作(『パンプ』、『ミキシング・レディオ(2002年7月上演)』、『コンクリートダイブ(2002年12月上演)』)その3作とも舞台は「深夜」、そしてジャンルは「ノンストップコメディー」であった。そして、今回『ペパカン』も例に洩れず「深夜」の「ノンストップコメディー」である。なぜ4作連続でこういった設定の脚本なのか。その理由を松本氏はこう答えた。「以前にもお話したんですけど、僕は夜が好きなんですよ」。以前松本氏が話したところによると(『コンクリートダイブ』インタビュー参照)、「自分が不健全だから、健全な昼は嫌い」「夜に生きる人たちのエネルギーが好き」とのことである。だから、同じ新聞社が舞台のものでも朝から昼にかけて編集作業が行われる夕刊ではなく、朝刊を選んだのだろう。また、「重く人生を語ったりする話が嫌いなんですよ。テンポのよい話が好きですね。自分もお客さんも楽しめる話を書きたいんですよ。それがたまたま4作とも深夜のコメディーになっただけなんですよ」と松本氏は言う。ということは、今後松本作品のシリアスを見ることもできなくはなさそうである。

夜型人間
しかし、松本氏は「台本を書くのも夜が多いですね。昼太陽が照ってるときにはなかなか進みませんねぇ」と語った。どうやら松本氏が<夜型>の生活を送り、<不健全な環境>で執筆している以上、「シリアス・サスペンス・コメディー」など、ストーリーの内容に関わらず、時間設定は「深夜」になる可能性は高そうである。昼を舞台にした話を見れる日は来るのだろうか。松本氏の生活が健全なものになることを祈ってやまない。
<その1>  「太陽編」と呼ばれるワケ
 現在、脚本家・松本陽一氏が執筆中の『ペーパーカンパニー ゴーストカンパニー』。その台本が6C役者陣の間で「太陽編」という奇妙な名で呼ばれているらしい。なぜそのような名で呼ばれているのだろうか…。
 その理由は、台本の膨大なページ数にあった。毎週次々と渡される新着分。3月9日現在、そのページ数は237ページである。噂では、最終的には300ページに及ぶという。

名作と比べる…
 役者は渡された台本をクリップ(100円ショップなどで売られているもの)で挟んでいるのだが、普通そのクリップでは100ページ程度しか挟めない。つまり、300ページだと台本が3冊になってしまうのである。そのため、故・手塚治虫氏の名作『火○鳥』の中の「上・中・下巻」に分かれているシリーズになぞらえ、「太陽編」と呼んでいる、そういう訳なのであった。
 しかし、上演時間が2時間と仮定しても、2.5ページで1分。(久間氏の『桐の林で二十日鼠を殺すには』がおよそ1.4ページで1分)それを演じる役者は、まさに「太陽のような情熱」で臨まなければ、この過酷でハイスピードな作品を乗り越えていくことはできないのではないだろうか…。
見学をして得たもの「百聞は一見にしかず」
 松本氏は執筆に取り掛かる際、実際に新聞社と新聞博物館を見学したそうである。松本氏は「いやー。見学した甲斐がありましたね。すごいいろんな収穫がありました。でも、見学したところはフロアも広くて記者の方も何百人もいるような大手の新聞社だったんで、エラいもんに手ぇ出しちゃった!って思いましたねぇ」と語る。また、そのときに記者の方にもお話を聞いたらしく、「いやー。すごい勉強になりました。記者魂みたいなものを。どの方も話されてた<勧進帳>のエピソードは、そのまま使わせてもらいました」と松本氏は子供のような無邪気な顔で嬉しそうに語った。<勧進帳>の内容については、ストーリーのネタをバラしてしまうことになるので言えないらしい。非常に気になるところである。

日本新聞博物館
 今回のセットのイメージは、新聞博物館で浮かんだらしい。一緒に行っていた舞台美術の吉本伊織氏と館内の「作業の様子みたいなVTR」を見ていたときに閃いたと言うのだ。「あれを見たときに、ピロリロリーンってきたんですよ。インスピレーションを得たって言うんですかね。そのときはまだ台本を1ページも書いてなかったんですが、セットのイメージが浮かぶとともに、そのセットの中でキャラクター達が動き出して…。帰りはすごい軽い足取りでした」と松本氏。実際の現場を見学することにより多くのものを得た松本氏。「百聞は一見にしかず」とは、まさにこういうことを言うのだろう。


描きたかったシーン
 松本氏にはどうしても描きたかった・描きたいシーンが2つあったらしい。1つはオープニング。「ここが書くのに最も苦労したシーンです。新聞社という世界に生きる人たちの<戦場>を描くために、一番時間をかけて書きました」。そして、もう1つがラストシーン。「ここはまだ書いてないんですが、すごく思い入れの深いところです。内容も明かせないんですが、今までの3作品にはない『シリアス』の要素も存分に入った<ハートウォーミングコメディー>の名に恥じない、感動的なシーンになりますよ」と自信に満ちた顔で語った。6Cの売りでもある「ハートウォーミング」。ペパカンではどのようなものになるのか。非常に興味深いところである。
             (3月9日 君島・石神井台にて)


 劇団6番シードに潜入取材をしているとき、ある役者から「稽古中の松本陽一氏が時折眠そうな顔をしている」との情報が入った。もしかすると、彼は執筆に夢中になるあまり、寝不足になっているのではないか。そんな仮説を立てた本紙は、松本氏とその周囲を探ってみることにした。

 松本氏の私生活をよく知る劇団員に話を聞くと、彼は毎日きちんと睡眠をとっているらしい。しかし、それならば眠そうにしているのはおかしい。そう思った本紙記者は、意を決して松本氏に直撃インタビューを敢行した。
 松本氏はいぶかしげな顔をしながら答えた。「…そりゃーちゃんと寝てますよ。寝不足じゃおもろい脚本は書けませんよ。たまに少し夜更かしして書いちゃうこともありますけど、そういうときに書いたのは大抵後で書き直しになっちゃいますからね。だから、寝るようにしてます」。それはそうだ。あのようなハイスピードでテンションの高い話を、しかも全4作200ページ以上も書いているのだ。
元々、こういう

眠そうな顔

とても寝不足では無理な芸当だろう。「僕は好調・不調の波が荒いんですよ。1週間に1ページしか進まないなんてときもあります。つまり、書けるかどうかはタイミングが大事なんです。だから、そのタイミングがいつ来てもいいように、いつでも状態は万全にしておきたいんです。睡眠もちゃんととって、食うもんもきちんと食って」。なるほど、「心・技・体」が揃って、初めて素晴らしいストーリーが浮かぶということか。
 さらに、松本氏はこう続けた。「それでもあまり寝れないときもあります。夜2時まで書いたら寝ようと思ってて、ずっといいアイデアが浮かばない。でも、終了間際の1時45分頃になって急にいいアイデアが浮かんでテンションが上がってくる。そうなれば、書くしかないので書く。それで寝れない。そんなときもあります」。
 脚本家という職業も、新聞記者と同様、なかなかツラい職業のようである。


現在、君島部長が鋭意取材中!
                            次号掲載予定