>>>役者vs松本陽一 対談企画<<<
第6回 AND ENDLESS・佐久間 祐人

さあ、いよいよ最終回!!
ラストを飾るのは、今注目の劇団AND ENDLESSでご活躍の佐久間祐人さんです。
よろしくお願いします。

さて、合流からまだ2回目の稽古ということですが、雰囲気などはいかがですか。

佐久間 はい、あの、皆さんに良くしていただいて(笑)、まだよそよそしさ感も残るところもあるんですが、やっぱり、芝居作りなんで、一つのチームになった時に生まれるものって絶対あると思うんで、早くチームに溶け込みたいなとは思ってるんですけれども。
松本

合流された日がすごく印象的でしたね。
今まで割とぬるーくい穏やかに稽古が進んでたんですよ。劇団の稽古だと若いやつがいたりして厳しくやるんですけど、オイルは皆さんよく分かっていて気を使ってくださる方ばっかりなんで、僕もニコニコしながらやってたんですよね(笑)。それで、いよいよ佐久間さんが合流されたその日に、入った稽古場の雰囲気が全然違っていたんですね。ピーンと張り詰めていて。あの蘭さんですら(笑)。
佐久間さんは、どうでした?

佐久間 やっぱり緊張はしましたね。例えばまだ台本を持ちながらとか、読みあわせとかにしろ、「よーいハイ」っていうあの瞬間に、どうやって切り替われられるかっていうのを日々気にしながらやっていて、特にこういういろんなところから集まった人間がいて、皆さんね、僕も含めて、相手がどう出てくるのか気にしながらやってますし(笑)、当然、松本さんの本や演出に対してどう、何を持ってくるのか、特に一発目って役者としてはそういう駆け引きもあると思うんですよね。その時に、変な話「しくじれない」っていう思いと、「一発カマしてやろう」っていう思いがありますし、周りの役者さんからもそれを感じますし。
松本 割と番手としては遅いんですよね。ポンと出てきたときの周りの空気と言うか反応が面白かったですね。結構セールスマンの能龍さんと絡むんですよね?
佐久間 そうですね。
松本 能龍さんとは古い仲なんですよね?
佐久間 そうです。前に別なお芝居で、僕自身が役者さん集めてやってみようってやった時に。
松本 「熱海殺人事件」ですね。
佐久間 そうです。能龍さんと宇田川さんと一緒にやらせていただいて。
松本

そこの丁々発止の駆け引きが面白かったですよ。全然違いましたもん、能龍さんも。やられたっていう戸惑いもありつつ、でもすごく楽しそうでしたね。その掛け合いでググっと引きあがっていく感じとか。
後半に、佐久間さんが周りから突付かれるシーンがあるじゃないですか。そこの能龍さんのテンションの上がり方とか松田さんのテンションの上がり方とか、物凄いおもしろくて。「来たな!」という感じでしたね。

オイルの話はまた後々詳しくお伺いするとしまして、まずは、佐久間さん自身についてお伺いしたいんですけれども、最初の6番シードとの出会いはどこにあったんですか。

佐久間

僕がまだ別の劇団でお芝居をやっていたときに、ある方がプロデュース公演を企画されまして、その時僕も呼ばれまして、そこに6番シードの妹尾さんが来てて。今、こうして繋がっているのは、そのプロデュース公演が第5回くらいまで続いたようなんですが、僕が第1回、能龍君も第2回に出ていて、そういう中で、6番シードさんやサギまがいさんと繋がっていったんです。
でも、実は、遡ると数年前に、実は、6番シードさんのお芝居を偶然見たことがありまして。
僕がまだ芝居を始める前だったと思います。

松本 芝居を志す前に?
佐久間

そうですね、始めるか始めないかというぐらいの頃に、阿佐ヶ谷で「桐の林」という作品を。

松本 私のデビュー作ですね(笑)。

えっ、じゃあもう10年近く前ですね!?

佐久間

松本さんには、知り合ってからそういう話もさせていただいたんですけど、松本さんの事はすごく良く覚えてまして。役者さんとして。バスの運転手でしたよね。それで出会ったときにそういう話もしたんですけど、その時、着ぐるみショーのバイトしてたんですけど、そこで知り合った人が「桐の林」に出てたんですよ。それでしっかり覚えてまして、6番シードさんの事を。それで何年かして、妹尾君と一緒になった時に、ああ、あの時の劇団の人だ〜と。その繋がりで松本さんを紹介していただいた時に、「覚えてます!」って。


6番シードのメンバーですら、一人ぐらいしか見たことがないですよ、その公演(笑)。

松本

その舞台を生で見た人はほとんどいないですね。宇田川でも見てないですから。
すごい深いつながりですね。

その時見た印象は?

佐久間

とにかく、松本さんを良く覚えてるんですよ。だから、印象に残った役者さんだったんだなあ、って思い出したときに感じて。僕自身、役者として「覚えてもらえる役者になろう」っていうのを目指していまして。良くからかわれて物まねされたりとか、こんな台詞を言ってたって冷やかされたりとかあるじゃないですか。心の中で、そういう役者でありたいなと密かに思ってるんです(笑)。
松本さんは書かれてもいるし、演出もされてらっしゃるので勿論大変な作業だと思うし、すごいなあと思うんですけど、なかなか「本」って、何年か経って、ストーリーを全部思い出すっていうのは難しいと思うんですけど、あの役者があそこであんな顔してたな、っていうのは結構覚えていてもらえるじゃないですか。

松本 そうですね、ストーリーは、すごく気に入った作品でもザクっとしか覚えてないですよね、最後泣けたとか、誰と誰が再会した、とか。でも、役者さんのことは覚えてますもんね。
佐久間 役者が何を言ってたかっていうのも忘れられちゃうかもしれないですけど、あの時あんな顔してたな、とかあの役者で笑ったとか、例えば見終わった後に、どうだこうだと悪く言われても、結局その役者を2年3年経っても覚えていたとしたら、それって役者の勝ちなのかな、ってそんな風に思ったりもしますし。

じゃあ、お芝居を始めたのはその後になるんですね。

佐久間

そうですね、ちょうど97年から始めたんです。

そのきっかけは何だったんですか。

佐久間

最初は、誘われてという感じなんです。大学を卒業する年に、別の大学に行ってた高校時代の友達が、何か人前に出る事をしないか、と言い出しまして。僕、教職免許持ってるんで教師の試験とか受けたりしてまして。僕の家は家系が教師一家で、祖父も父も校長まで勤め上げていて、お袋も姉も公務員で。だから僕の中でも、教師を将来の選択の一つとして考えていたんですけど、ちょうど僕らくらいの年は採用が厳しくて、ムリだろうなあって思ってたんですよ。普通にアルバイトでもして、なんて思ってたところに、その友人に「普通に就職しないでさ(一緒にやろうよ)」って誘われまして。で、面白そうだったんで、じゃあいいよ、と。とりあえず卒論も書いて、卒業して、身奇麗にして、じゃあ何をするんだ、って話をしに行ったんです。そしたら、そいつが大学を留年していて。1年待ってほしいと。それで僕も、バイトして金を貯めようと、コンサートの警備とか、住み込みのバイトとか、いろんなバイトを転々として。それで1年後の冬に、家も引き払ってそいつと住み込みのバイトを一緒にして最後の金をためて、じゃあ一緒に暮らし始めましょう、と家まで借りたんですね。そしたらそいつが、2回目の留年を(笑)。それで、もう1年待ってくれ、と。でも、もう待てんだろう、と。
結局ね、まだ、何をするか決まってなかったんですよ(笑)。じゃあ、お笑いとかやるのか?って。ただ、僕はそのとき、なんとなくですけど、お芝居に興味があって、でも全然その世界を知らないし、そんな素人でどこかの劇団のドアを叩くのもちょっと気がひけるので、着ぐるみショーのバイトを始めたんです。そんなことやってたと言えば、なんとなく舞台経験がありそうにも見えるかなと(笑)。それで着ぐるみショーを始めたんですけど、友達が続かなくて。

松本 相方問題ですね(笑)。
佐久間 問題なんですよ。結局1年後にですね、友人は夜の仕事に興味を引かれたらしくて、そっちでやっていくと言い始めまして(笑)。じゃあオレはどうしようかな、と。でも、何もせずに実家に引き上げていくのもつまらないなと思っていたんですね。そしたら、着ぐるみショーをやっていた仲間の中に、劇団やってるという人がいまして、芝居を見に行ったんですよ。すごくちっちゃな小屋で、二人芝居だったんですね。劇団員二人、作演出家さんが一人で。その時には僕も結構な年にもなっていて、今から勉強してる時間もないな、と思って、ここに入れば次の公演に出れるなと思ったんですよ(笑)。
松本 二人しかいないんですもんね。
佐久間 そうなんですよ(笑)。間違いなく出れるな、コレって。
松本 敷居が低いぞと(笑)。
佐久間 そう、それでそこに入って、そこで2本お芝居をやりまして。つかこうへいさんの作品をやったんですけど。ところが、看板の女優さんが結婚して辞めてしまうという事になりまして。そしたら演出家さんが、じゃあこの劇団は休みというか、ほぼ辞めてしまうという事になりまして。ああ〜、1年でなくなっちゃうのかあ(笑)、どうしよう、と思ってたら、その方に「自分で劇団を作ったらどうだ」と言われまして。この世界に入って1年ぐらいで全く何も分からないで、でも言われるがままに、僕を誘ってくれた人と僕とで劇団を立ち上げたんですよ。で、書く人がいなかったんで、僕が書いて演出もして。そんな時代もありつつ、4,5本やって。
松本 結構な本数じゃないですか!?
佐久間 ええ、一応・・・(笑)。その頃は、自分たちで客席を作るような小さいところでやってまして、なんとなくいつかでかいところに、とか、この世界で食えるようになるまでは、なんて夢物語を語っていて。それで、その頃偶然に大学の同窓会に出たときに、そこで再会した友人が芝居をやっていて、今度大きいところに出るんだ、一緒にやってみないかと誘われまして。で、行ったんですよ。そこで、今所属している劇団のアンドエンドレスの主宰の西田と客演同士で出会いまして。いくつか劇団を転々としてたんですけど、最終的に、その西田に惹かれて、2年前に今の劇団に入って、お芝居を続けている、という感じなんです。

結構、波乱万丈なんですね〜。

松本

日曜日の番組みたいですね。

佐久間

結構紆余曲折あったりしました・・・。


なんとなく、ツイてない感じがしますよね(笑)。


松本

行く先々で問題が待っているような。

佐久間

そうなんですよ(笑)。

松本 それが芸の肥やしに。

まだまだ掘り起こせばいろいろ出てきそうですよね(笑)。


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