>>>役者vs松本陽一 対談企画<<<
第3回 演劇系企画Funny*Flying*Fish・MiSAKi

第3回の今回は、演劇系企画Funny*Flying*Fishで主宰をつとめていらっしゃる、MiSAKiさんにご登場いただきます。
まず、出会いについてお聞きしたんですが、最初の出会いは宇田川さんだったんですよね?

MiSAKi 一番最初の6番シードさんとのお付き合いは妹尾さんなんです。後に客演することになった所の打ち上げでご一緒して。でその時、妹尾さんに見に来てくれといわれ、チケットを売られまして(笑)、それを見にきたら・・・

それが6番シードだった。

MiSAKi

そうなんです。

それはどの作品だったんですか?

MiSAKi

工事現場のお話です。

松本 コンクリートダイブですね。
MiSAKi

その時に、宇田川さんって素敵だなあと思って遠くから見ていたんですけど。その後、また別の6Cに繋がっていた女優さんと知り合う機会があって、また6Cさん観に行って、その方に「あの人(宇田川さん)好きなんです」って言ったら、宇田川さんを紹介してくださって。で、宇田川さんに(自分のお芝居に)出てください、とお願いしたんですね。それからお付き合いが始まって。
結局客演はしていただけなかったんですが、見に来てくださって、好きになっていただけたようで、そこからですね。

そこに松本さんが加わってくるのはいつごろなんでしょうか?

MiSAKi

去年の秋公演に、宇田川さんと一緒に見に来ていただきまして。どうだったんでしょうか・・・という感じなんですが・・・

ではその辺をこれからたっぷり語っていただきましょう

松本 「くるみ」っていう作品ですよね。MiSAKiさんの台詞は、冒頭の朗読で長台詞が一つあるだけで、それからずっとしゃべらない役でしたよね?
MiSAKi 鬼っ子の役で、しゃべれるけどしゃべらない役で、自分の面倒を見てくれていた人がいて、その人が自分の元から離れてしまうときに、その人の名前を1回だけ言いましたね。
松本

その最初のオープニングのシーンがありまして。そこで若い役者さんが、ちょっと抽象的な演出で芝居をしている中でパッと明かりがついて、その中でMiSAKiさんが朗読を始めるんですけど、その声のトーンで、「あ〜、(この人で)行こう」って決めました。
一発目の声で、こりゃあいいなあ、という印象でした。
その後ずっとしゃべらない役で、もう一ついいなあと思ったのは、所作ですね。指先にまで気を使って、足の先までお芝居を考えてらっしゃる方だなあと思いました。
宇田川さんと一緒に見に行ってたんですけど、じゃあオファーすれば、といわれて、そのまま飲み会に連れて行ってもらって、その場でお願いしました。
公演初日で、作・演出・主演で、まだこれからって時に「すいません、(出演を)お願いできますか」って(笑)。

MiSAKi

みんなに発表しました、その場で。
「決まりましたー!」って。

松本

みんなポカーンとしてましたね(笑)。こっちはキャッキャはしゃいでて、周りの若い役者さんたちは、初日を終えて、これから演出のダメをもらおうかというそんな時に(笑)。

MiSAKi 一気にテンションが上がりまして。ガンバローって思いましたね!
松本

あの公演はすごく印象的でしたね。お話も、人間の心の弱いところを大事にされる作風なんだろうなあと思って。そこは、共感というか、僕もグダグダなコメディをやりつつも、一番大事なそういう目線は無くしたくないので、それがお客さんの共感を呼ぶんじゃないかなって。
例えば、将来金持ちになったときに、なれたらの話ですけど、そういう目線が消えていくような作家にはなりたくないなあ、と。そういう作品の視点が近いというか、志が近いところで書いてらっしゃるなあというのは、その作品を見てすごく思いました。

逆に、松本陽一作品の印象は?

MiSAKi

まず、美術すげーな、ということがやっぱり。

松本 コンクリートダイブは特にそうですね。
MiSAKi

ホームページにも、美術についてすごく考えているって書いてあったのを読んで。なるほどな、と思いました。うちは大道具はほとんど使わないで、ほぼ素舞台なので、なんという違いなのかと思いまして(笑)。
重機が置いてあったじゃないですか?

ミニショベルカーですね。

MiSAKi

なんてことだ!と。なんてことするんだ!と思いまして。
あと、人がいっぱいいるなあ、と。自分はずっと少人数でやってきてたので、大体10人前後で。昔に比べると小劇場には少なくなってきたと思うんですけど、6Cさんは先輩後輩のある、メイン・脇役・もうちょっと下の役って、きれいに分かれてるじゃないですか?それが逆に新しくて、すごいなあと思いました。そのやり方をやってるのもすごいし、今の若い人達がついて行ってるっていうのもすごいなあと思いましたね。這い上がろうというハングリー精神が。

松本

ちょうどうちの劇団の過渡期の頃ですね。人数も増えてきて、僕の書く本も出る人数が多いのもやり始めた頃で。その後30人ぐらい出る本もやりましたし、今回みたいな8人芝居もありましたし、バリエーションが増え始めたんですね。
あのユンボは、主宰(久間勝彦)が作ったんですよ(笑)。一人で。
途中からよく分からないモードに入りまして。地下の叩き場にいて、ずっとやってるんです。で、「(そこまでしなくても)いいですよ、主宰だし」って僕が言ったら「うるさい!」みたいな(笑)。「話しかけるな!」って(笑)。締め切りが完全に過ぎてて、全体的に、これ以上美術にこだわらなくていいよ、という空気になってきてるのに、逆に半ギレで、「いいよ!俺一人でやる!!」って。
もう、何にのめりこんでるんだって(苦笑)。

MiSAKi あれは本当に素敵でしたね〜。
松本 皆さんから「よく本物を入れたね」って言われました。
MiSAKi 私も本物だと思ってましたもん!

松本さんは他にも何作品かご覧になったんですか?

松本

もう一作品見ました。それがまたガラっと違う役で、クールな男っぽい、冷たいキツイ感じの役で、声もグッと低くして、いわゆる「かっこいい女」みたいな。前に見たのと真逆の役で。その頃はもう既に出演のOKをいただいていて、ちょうどMiSAKiさんをどんな役にしようかなと膨らまし始めていて。現在のシスターのイメージがやや出来始めた頃にそれを見たので「こっちもいけるんだ!」って、どっちにしようかなあ、と思いましたね。
結局ボツになったんですが、最初、キツイ女社長みたいな役が出る予定だったんですが、MiSAKiさんはそれも出来るんだなあ、って迷いましたね。


ご自分で自分の役を書くときに、自分のキャラクターはどのようにして考えるんですか?

MiSAKi

基本的にうちでやるときは、若い人が多いので、私が話の中心を通して、芝居を回すような役をやるんです。浅はかな話ですが、こんな台詞が言いたいがためにこの話を書く、ということもあります(笑)。

松本 すばらしいですね〜。
MiSAKi 2回目に見ていただいたのは、女の子に生まれたんだけど、その家の頭首として家を継がなければいけないので、男として育てられて、それに葛藤している役で。他のキャラクターもそれぞれ心に葛藤を抱いていたりとかして、うまく世界とリンクできなくて、自分と周りとのズレを感じていて、そのズレがあるから理想郷を求める、っていうお話だったんですけど、そういうところから考えていくので、あまり自分の役についてどう、って考える事は無いですね。
松本

ご自身でやられる時は、もうイメージバッチリ、言いたい台詞もバッチリ(笑)、役作りはスパッと?

MiSAKi

もう、役作りしませんもん。


松本さんも作・演出・出演と3つやったりしてますが、その辺の大変さはないですか?

MiSAKi

大変なのは、自分自身の役作りはしなくてよくても、絡む役者さんが問題ですね。見て、お芝居の全体を演出して、これならいけるかな、あとは仕上げていくかなっていうところまで自分の稽古ができないので、自分と絡むシーンだったり役者さんに対しては、申し訳ないなと思いますね。

松本

僕も、そういう部分で出ないようにしてるんですけど、自分の演技はどうにでもなるんですが、共演してるときに、その画を外から見たいし、代役でやってると相手の役者さんも掴めないし、いろんなジレンマがありますね。
特に若い役者さんと共演したりすると「怖い演出家」っていう顔でこっちを見てるんですよ、演じている最中に(笑)。台詞噛んだりすると、ゴメンナサイってこっち見てて(笑)。こっちを怒鳴りつけるような役でも、目がオドオドしてたりしてね。どんと来いよ、って言ってもなかなか来ない(笑)。

MiSAKi 最近はワークショップをやっていて、その生徒さんを出演させたりするんですけど、その生徒たちと絡む役を私はほとんどやらないんです。でも、一言二言でも(絡むシーンがあると)、嬉しそうなんですよね。
松本

あ〜、共演するのが。

MiSAKi

ええ。

松本 Funnyの人達はホントに、可愛いというか素直というかね。一度僕らのワークショップにも参加してくれたんですけど、なんて純真なんだろうって。礼儀も正しいですしね。

統率する主宰の人柄っていうのが、その団体に反映されてるんですね。

松本

そう、僕、反映されてるんだなあって思ってたんですけど、(MiSAKiさんと)一緒に稽古を始めたら、結構グダグダだから(笑)、稽古中にグワッハッハって笑ってたりと。「あ、あれ?」って(笑)。
さぞ、背筋のピッとした方なんだろうと思ってたんですけど・・・結構な奇人ですね。

MiSAKi

(爆笑)

松本

あ〜、共演するのが。


私も、すごくやわらかいイメージのある女性だなと思ってました。

MiSAKi

ええ!?ほんとですか?

松本

声もやわらかいですよね。


この「感性表現力教育講師」というのは、元々あるものなんですか?

MiSAKi

元々、表現教育というのをやってるんですけど、ある会社で、幼稚園児を対象に歌とダンスとお芝居で感性や表現力を高めて行きたいっていう事業がありまして、そこで講師や講師を育てる仕事をやってたんですけど、そこが勝手に作った名前なんです。


じゃあ、今はそれをそのまま個人でやってるんですか。

MiSAKi 個人としては表現教育をやってます。

具体的にはどんな活動なんですか?


MiSAKi

現代の子達とか、コミュニケーションが下手だといわれてるし、下手だと思いますし、自分を表現するにもちょっとした壁があったりしますし。私自身もあんまりそれをうまく出来る方ではないので、その苦しみというかジレンマが良く分かるんです。そういう立場から、人と対話をするには、コミュニケーションを取るためには、自分が思ったことを出してもいいんだよ、でも、出すためには受け入れてもらわなきゃいけないよね、出し方もあるよね、自分が良ければいいわけじゃないし、相手の事もちゃんと受け取らなければいけないよね、というような事を、私はシアターゲームみたいな方法を使いながら、疑似体験をしてもらう、という風なことをやってます。
劇団の稽古でもあったりすると思うんですけど、パッと「じゃあ、椅子になって」とか言われたときに、「あ、どうしよう」ってなるじゃないですか。別によくある既成の形にしなくてもいいんだよ、もっと自由な発想で、固まっているものをどんどんと取り外してあげていったほうが、やっぱり豊かに暮らしていけるかな、と。


芝居の基礎に全く通じる事ですね。

松本

お芝居を始めた若い子っていうのも、最初は一緒ですよね。むしろ、うちは20代後半とか30になって芝居がしたいという人もいて、当たり前ですけど、心がガッチガチで(笑)、それでもときほぐれていくと、どんどん表情が豊かになっていって。
最近は演劇がコミュニケーションの方法として注目されていると聞きますし。

なるほど。
・・・オイルの対談というより、演劇討論会みたいになってきましたね(笑)。
やっぱり、普段の自分の体験とか、そういうものがMiSAKiさんのやられていることに反映していたりするんでしょうか。

MiSAKi

一応、するつもりではいるんですが、本当に体現できているかどうかは・・・まだ浅いなあ、と。

ちなみに、もしよければ、その部分も教えてください。

MiSAKi

本当に、出来ているかどうかはわからないんですが(笑)。
まず、人を受け入れる。人のやっていることを見て、やっていることを聞いて、否定から入らないでまず受け入れるように心がけてます。あと、自分が良ければいいんじゃなくて、誰か一人がいいんじゃなくて、場が仲良くなるというか、他の人もみんな同じ距離感でいられたらいいなあと思いますね。それには気を配るようにしています。

松本

他の出演者の方とも話したんですけど、お芝居は、受け入れる方が難しいですね。最近思っていまして、若い人は、自分で芝居をするとか、自分のキャラクターを作るとか、自分の台詞を考えて言うっていうのはいいんですけど、さらけだして、そして受け入れるっていう部分の壁をすごく感じるんですね。今回、オイルの稽古をしていると、誰彼というわけでもなく「相手のために」っていう言葉が稽古場でよく聞こえるんですね。あなたがこうなるために、私はこうしましょう、って。(小沢・宇田川・鈴木の)最初の対談のときに、「ライバルはいますか」っていう質問がありまして、全員が口をそろえて「いません」って言ったんですね。というのは、お互いがお互いで自分のポジションや連携を良くしようというのが現場に溢れているということなんでしょうね。これが、芝居を良くしていくし、楽しいですよね。その方が。お芝居の稽古って最初は辛いけど、慣れてくると表現するのが楽しくなって、リラックスしてくると自由になっていきますよね。それと同じように、受け入れるっていう壁は最初はすごく辛いのかもしれないですけど、扉がちょっとでも開いてしまえば、どんどんお芝居が自由で楽しくなっていくんじゃないかなと思いますね。

・・・ってなんか、すごい話になってきましたね(笑)。

(笑)ええ。すごいですね。
こういうお話、ずっと聞いていたいんですが、一応オイルの対談なんで(笑)。
ちょっと話をオイルの方に・・・

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