>>>役者vs松本陽一 対談企画<<<
第2回 劇団東京サギまがい・山田能龍


本日は、ダンカンさん率いる『劇団東京サギまがい』さんで、副座長を務めていらっしゃる、山田能龍さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

山田 よろしくおねがいします。

さて、今日も稽古でしたが、進み具合はどうでしょうか。

山田

そりゃあねえ、どんな感じかっていわれたら・・・悩んでます。
でも、稽古場便りにも書いたんですけど、まず単純に、悩んだり、ダメだしもらったりっていうのは、8割凹みですけど、2割の部分で非常にいい状態ですね。

元々このオイルが立ち上がった時、きっかけの一つが山田さんだったんですよね?

松本

そうです。吉祥寺でお好み焼きを一緒に食べまして。ちょうど(オイルを)やろうかなと思ってたぐらいのときに能龍さんと飲んで、実は・・・って話をして、じゃあやりましょうって、一も二もなく決まって。その日の夜にいろんなものが固まったという感じですね。
5時間ぐらい飲んでね(笑)。

初めてこの企画を聞いたときはどう思われましたか?

山田

すぐに飛びつきましたね。
その頃、客演をやめてた時期だったんですね。観劇もなんですけど、ある時期、見に行きたい芝居も見に行かないようにしてたんですよ。ほら、付き合いってあるじゃないですか。「俺も行くからお前も来いよ」みたいな。客演も同じなんですけど。
友達でね、ちょこちょこいっぱい客演してて、年8本9本出てて、それってどうなんだろう、これ意味あるのかな、みたいに感じてたらしくて。そういうのを聞いて僕も、そうだなあって思って。で、僕も客演を控えてたんですよ。
それで、3年弱ぐらい経った時に、(客演)やりたいなあ、でもやりたいのないなあ、って言う感じで。ステータス的に意味のあるものだったら、自分がつまらないと思ってたり、特に得るものが無いかもしれなくても当然出たいし、もう一つは、自分が得るものがあるって確実に分かってるものには出たいなあと思って探してたら、ちょうどこの話がありまして。で、オイルに関しては両方だと思ったんですね。これからステータスになっていくだろうし、何か得る事は間違いなかったし。

お二人が初めて会ったのはいつなんでしょうか。

松本 宇田川さんが客演した「熱海殺人事件」に能龍さんが出ていらっしゃって。で、僕はノコノコその飲み会に付いて行ったんですよ。そこが「はじめまして」で。そこでいきなり「ぶっちゃけ僕の芝居はどうでしたか!?」って聞かれて。いや、まだ何も知らないしみたいな(笑)。そのとき、この人凄いなあって。

能龍さんは、松本さんの事は知ってたんですか?

山田

6番シードさんのことは知ってて。だから、ああ、この人が6番シードの作演の人なんだ、って。

お互いの第一印象はどんな感じだったんですか?

松本

最初の芝居の印象でね、途中でフンドシ一丁になって「抱きしめてトゥナイト」を歌うっていうシーンがあって(笑)、これ凄いな、と思って。何が凄いって、正直言うとお客さんは少し引き気味だったんですけどね(笑)、それでも全く動じないで結局歌いきったんですよ。もちろんそれは演出だろうし。
その後、能龍さんにその話をしたら、「何度かくじけそうになったけど、頑張りました」って。
ああ、くじけないだこの人!って思いましたね。

山田 はい。何度も心が折れそうになりました。
松本 そうそう、折れないのが立派だな。僕なら折れるなって(笑)。

その後、話をしたときは?

松本

いろいろ聞かれたのを覚えてますね。「ここどうでしたか?」みたいな感じで。僕もそんな滅多なこと言えないんですけど。すごい食いついてくる方だなあという印象でしたね

山田 すごい貪欲でした。もう、会ってすぐ夢語る、みたいな。会ってすぐキャンプファイヤー、みたいな(笑)。

山田さんが松本さんの作品を最初に見たのは?

山田

これがねえ、とっても不思議な感じなんですけど、「テンリロ☆インディアン」の女性バージョンのビデオです。それ見て、こりゃあおもしろい!って思いましたねえ。で、その後にすぐ「ギブミー・テンエン」見て。その時はね、稽古を見に来たんですよ。で、一番最初のファーストシーン見て「ああ、おもしろいな」って。
そんなにしゃべった事無くても、ピンと来る事言う人ってわかるじゃないですか。ちょうどね、松本さんが、ちょっと幼い感じの可愛らしい女優さんに演出つけてて。そんな感じの(子供みたいな)人にタバコ吸わせて、その違和感が普通なんだって思わせたいんだ、って言ってて。ああ、なるほど面白いなあって。

松本 すごいですね。細かい演出まで覚えてるんですねえ。

では、こうやって一緒に芝居をするようになって、印象が変わった部分とか、新たに気付いた部分などはありますか?

松本

基本的には変わらないですね。話してて分かる事ってありますよね。そこでもうピントがあわないとか、ピントがややズレる人とかいて、勿論全ての役者さんとピントが合うわけじゃないから演出としては広めにピントを合わせてるんですけど、能龍さんとは、お話してる段階で合うなあと思って。よく考えたら、僕は「熱海〜」しか見ていない状態でオファーしたんですよね。だからむしろ、話してるときのフィット感がすごく良くて。その後にサギまがいさんのお芝居を拝見して、あのピントは間違って無かったなって。
その時は、目の見えない主人公を演じてらして。コミカルなシーンもシリアスなシーンもあって、いろんな能龍さんが見れるちょうどいい作品だったんです。目が見えないからこその「見えない突っ込み」みたいな感じがあったんですけど、お芝居から離れないで上手に突っ込みをする方だなあと。突っ込んでます、みたいなことすると、お客さんて引くじゃないですか。そこをしないで、きれいに一線を守ったまま突っ込みしたり、シリアスなシーンも良かったし。そこがすごくいいなあと思って。
実際に稽古を一緒にさせていただいて、思った以上に、思った以上にね、貪欲で真面目な方なんだなあって思いました。

山田 あ、出ちゃってます?それ。
松本 そのピントの合う感じっていうのは、演出が短い言葉とかニュアンスで語っていくときに、きちんと汲んでくれたり、そういう会話ができるから、正しかったなって思いましたね。
山田

僕は、変わったって言うか、より知った、という感じですね。同じようなことなんですけれどね、「この人感じ合うなあ」っていう部分の細かい部分が良く分かった。いい意味で「やっぱり」って。
僕に対しても、いいところも悪いところも的確に分かってるなと。自分的に「そこ苦手なんですよ」っていうところは気になってるみたいだし、そういうところがバッチリ一致してますね。

松本

稽古始めるときに、他の劇団で演出されてる方とか看板張ってる方とか年上の方とかいらっしゃって、僕も、どんな稽古になるんだろうとか、すごく我儘な人はいないだろうか(笑)とかね、一般的な不安を持って稽古に臨んだんです。でも、これは他の皆さんにも言えるんですが、すごくやりやすくさせてくれてる、というか。いい芝居を作りたい、いい芝居をしたい、っていう風に、目的が一つしかないんですよね。ほら、それ以外に余計なファクターのある人が多いじゃないですか(笑)。だから稽古始めるときにふっと、逆に、僕の力も抜けましたし、逆に、これまでやってきた事をやればいいんだと思いましたし、気を使わなくていいんだと思いました。逆に気を使わなくていい感じにしてもらってますしね。
だから、より「いっぱいダメ出さなきゃ」(笑)って思います。ダメがないと怒られそうで。「見てたの!?」って(笑)。最初はもっと、キャリアのある役者さんが舞台に立って、丁々発止やれば面白くなるかなと思ったんですけどね。幸い今、時間があるので、結構短いシーンをコツコツ返しながらやっていて、かなり細かいところまで突っ込んでダメ出して行こう、ってやってます。

山田

粘ってくれ!って思いますね。
出来る子なのよ、俺!って(笑)。
もっと粘ってくれたら、もっと近づいたりしますよ、っていう貪欲さはありますね。
そのために稽古に来てるといっても過言ではない。

松本

粘ってくれオーラはね、いろんな人から出てますね。
そろそろOKにしたいシーンとかあるんだけど(笑)。
全体的にみんなが粘ってくれオーラ出してて、「それでいい」って言ってるのに、変えてくる(笑)。



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