vo8.「舞台は生きている」

専用劇場つくっちゃいました
ロングランにもほどがあります

 さて、いよいよ「最後の1フィート」今週開幕です。「開幕」っていうと何かスポーツのイベントみたいですが、何せ一ヶ月の長丁場なもので。今回は全16ステージ。たった16回と劇団四季には笑われるかも知れませんが、6C史上最多公演数です。それも連日ではなく、各週末という変則日程。つまり一週目の4ステージを終えると4日間空いて再び5ステージといった具合を繰り返す訳です。こうなると役者の心理はどうなるのか、それはやってみないと分かりません。今週はそんなことも踏まえて早々(でもないか)と本番を見据えた通し稽古を行いました。本番と同時刻に前説なんかも入れての通し稽古。いよいよ来週はお客様がここにいるのだなあと、ダメ出しそっちのけで感慨にふけってしまいました。本番の幕が開くと演出の仕事はほとんど終わり。舞台裏からただただ「見守る」事しか出来ません。そうなると役者はプレッシャーを一身に背負いつつ、時にお客様の反応を楽しんで、アドリブを交えながら演出家の手から離れたこの「最後の1フィート」の世界を自由に動き始めます。終演後にダメ出しを出したりもしますが、本番を迎えてしまったらあまり意味はありません。それが一ヶ月続くとどうなってしまうのか。素晴らしい進化を遂げるかもしれないし、はたまた迷宮に迷い込んでしまうかもしれないし。それくらい舞台は「生」の世界です。


「演出の手が離れた…」って
何やってるんスか、松本さん!
今回は作品のテーマとして「一篇の映画」を扱います。舞台の稽古をしてると、役者がふと稽古中に見せた表情をフィルムに残して、それを毎回見せることが出来たらと思うことがあります。映画はその一瞬をフィルムに焼き付けます。それが映画の良さであり、そこに至るまでの苦労が難しさでもあるんでしょう。舞台の難しさ、そして魅力は間逆にあります。16ステージあれば、16回違う物語が展開される。台本は同じ、登場するタイミングも同じ、台詞の間も同じ…にしようと日々稽古を繰り返しますが、最終的にお客様の前で、その瞬間の空気で、作品は変わります。それが舞台演出家としては永遠のジレンマですが、それが舞台の「生きている」という魅力なのでしょう。
 いよいよ始まります!小さな空間で生まれる小さな映画にまつわる小さな物語。いつもは本番前に強気な発言は控えてたのですが、皆様に楽しんで頂ける作品に仕上がったと自負しております。
それでは「ねりまの隠れ宿」でお会いしましょう!
 

 そして来週もこのコラムは続きます。一ヶ月公演なんでね。来週は公演初日のバタバタ感などを。
2005/8/25