vo12.「映画の話」

お客様とパシャリ。
隠れ宿公演にて。
 公演タイトルである「最後の1フィート」。実はこれは昔映画学校に通っていた時に書いたシナリオのタイトルをそのまま使いました。元になったそのシナリオは、完成もせず今も私の家の押入れに眠っています。その内容は、映像プロダクションを興した男が倒産して、その事務所を引き払う為に掃除していた時に、昔制作した低予算映画の未完成フィルムが出てきて、掃除のおばちゃんと二人だけの上映会が始まる…といったような内容だったと思います。今思えば「ニューシネマパラダイス」とかいろんな映画をパクってるような内容だったと思います。その未完成フィルムの最後の1フィートに映っていたものとは…というラストシーンでした。ラストシーンまでイメージが出来上がっているのに、書きあがってないのが何ともいい加減というか成仏させてあげたいというか、そんな思いで今回の舞台のタイトルにしました。

 アトリエが東宝撮影所のある大泉学園に近かったせいか、お客様の中に昔映画に関わる仕事をされていた方が多かったのに驚きました。そして当時の貴重なお話などを聞かせて頂きました。第二話の警察との道路使用許可の話は、自分が撮影をした時に一番苦労したことでしたし、いつか物語の題材になるのではないかと暖めていたのですが、そういうお客様が「よく知ってるねえ」と共感して頂いたり、「ドリーじゃなくてドーリーって呼んでたよ」「いやレールだろ」なんて会話に花が咲いたり、これは予想外の反応でした。

 映画の中で映画を扱ったり、舞台の中で舞台を扱ったり、いわゆる劇中劇というのはやえもすると物語を作る製作者の苦労自慢や自己賛歌のようになってしまいます。今回も舞台で映画を扱うので同じことだなと思い、極力映画から遠いシュツエーションやキャラクターを選びました。お笑い芸人に始まって警察官、借金取り、女子高生など。執筆していて一時は「これで一篇の映画が語れるのか」という不安に陥った時もありましたが、なかなか不思議なバランスの作品になったのではないかと今は思っています。
 それも様々な人が様々な形で関わっている「映画」というものの面白さなのでしょう。
「この後映画を一本観ようかなって気分になりました」
観劇後のアンケートです。このコメントが書かれてたら嬉しいなと思っていたので、「舞台」で「映画」をやった甲斐があったなと思います。
ご来場ありがとうございました。
ご来場ありがとうございました!

ちなみに劇中にいろいろと映画の小ネタを入れていたのですが、そちらはアンケートには書かれていませんでした。第一話のお笑いコンビのコンビ名とか、秤を売り歩くセールスマンとか、第二話のフィルムコミッションが涙した映画のタイトルとか。それから第二話の最後に語られる「ママは二挺拳銃」。あれは実際にあった映画ですが、絶版となっており入手困難です。ビデオ屋で見かけた方は是非ご一報を。

2005/9/22