5月8日(土)・9日(日)
 
 先日、最後の通し稽古を終え、いよいよあとは本番を迎えるだけとなりました。このコラムを振り返ってみますと、まずは昭和29年のリサーチから始まったようです。何故29年なの?と聞かれると、実は、「29」っていう音の響きがいいなあ、とか、そんなもんだったんです。戦時中の話や戦後すぐの話は世の中にいっぱいあるけど、高度成長期も始

昭和29年のすべてがここに!?
まってない、この29年という時期の話は、あんまりないぞ、とかね。そんな不純な気持ちも織り交ぜつつ、この「ギブミーテンエン」の物語は転がり始めました。私は台本を書くうえで、役者は自分の演技の為、美術さんは当時の建物や装飾を再現する為、実に多くの人々が、この昭和29年に夢中になっていきました。それはこのHPのコーナーでも紹介されています。
松本陽一29歳

最後の通しを見つめる目
 でも私は、脚本を書き、演出を進める上で、だんだんと昭和29年というキーワードを忘れていくようになりました。気にしなくなったと言ってもいいかも知れません。物語の舞台は米軍基地のある港町です。台本上で町の名前は出てきません。その一角の貧民街にあるウォーターヒルという酒場が主な舞台です。この酒場の名前も、台本上には書いてますが、ストーリーの中でその名前が出てくることはありません。私は、現代劇でも具体的な地名を出すのがあまり好きではありません。例えば練馬区とか、大阪、とか。現代劇でも何であってもどこか架空のおとぎ話感を残していたいのかもしれません。この星のどこかで起こった物語、というと少しキザですが。
だから今回の話も、昭和29年という舞台を借りていますが、僕の中ではその名もなき町の名もなき酒場の物語なんです。そこに現れる登場人物達、もちろん実在の人間は一人もいません。その酒場とそこに集う人間たちが作る「ギブミーテンエン」という空間なんです。

  私は今29歳です。私を筆頭に本当の昭和29年を知っているメンバーは一人もいません。だから、本当に当時を知る方や、基地の町で暮らした方からは、沢山のお叱りを受けるかも知れません。出来るだけ忠実に再現しようとした部分、物語として思いっきり派手にしてみた部分、この作品にはそれが混在します。当時そんな服装はないぞ、みたいな格好をしているキャラクターもたくさんいます。当時も今もそんな奴いるのか、というキャラクターもまたしかりです。また忠実に再現しようと頑張ったけど…という部分もあります。
ちょこっと出演します

台詞覚えなきゃ!

「29」という音の響きに誘われて始まったこの物語が、一体どんな空間となり、どんな時間となり、どんな物語となるのか。「ギブミーテンエン」という世界に生きる人々に会いに、劇場まで足を運んで頂ければ、これほどの幸せはありません。

それでは劇場でお会いしましょう。コラムでは言ってませんでしたが、私もちょこっと出演しております。今から台詞覚えまーす。