ギブミー・テンエン 〜昭和29年のクリスマス〜

昭和29年、夏。
寂れた倉庫の立ち並ぶ貧民街。
その町の外れにある一軒の酒場。

逃げ続ける青年。
俯瞰する娼婦。
掃除屋と呼ばれる男・・・。
そして、一人の少年 ―。

鳴り止まない銃声に乗せて、
静かで哀しい物語の幕が開ける・・・。


  「時代考証」という言葉を聞くと、胃がジクジクと痛みます。果たして私たちにどこまで―昭和29年―という時代が描けるのか、不安と緊張で本番を迎えるのでしょう。でも心のどこかで「そんなに気にしなくていいんではないか」と開き直ってる自分もいます。だからといって舞台上に平気でケータイが出てきたり、ヒロインが「マジキモい」と言ったりするようなナンセンス系の芝居ではありません。「気にしなくていい」というのは、「そこに重きを置く時代時代した芝居ではない」という意味です。
 人は環境で変わります。だから現代とその時代に生きた人々を同列にすることは出来ません。時代を環境と言い換えるのは少々乱暴かも知れませんが、でも、人の本当の根本部分はそんなに違わないだろうと想像してみるのです。
 私の両親が子供だった時代―。
 その時代の空気を吸って生活していたエネルギッシュな人々は、何を思い、どう生きたのか。私は書き手でありながら、早く舞台の上にその登場人物達が現れないかと、今から心待ちにしているのです。

脚本・演出   松本陽一


 
   
 

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